陶淵明の世界

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 読山海経其一、序


讀山海經其一

  孟夏草木長  孟夏 草木長じ
  遶屋樹扶疏  屋を遶りて樹扶疏たり
  衆鳥欣有託  衆鳥は託する有るを欣び
  吾亦愛吾廬  吾も亦吾が廬を愛す
  既耕亦已種  既に耕しては亦た已に種ゑ
  時還讀我書  時に還りて我が書を讀む
  窮巷隔深轍  窮巷は深轍を隔て
  頗迴故人車  頗る故人の車を迴らす
  歡言酌春酒  歡言しては春酒を酌み
  摘我園中蔬  我が園中の蔬を摘む
  微雨從東來  微雨東より來り
  好風與之倶  好風之と倶にす
  汎覽周王傳  汎覽す周王の傳
  流觀山海圖  流觀す山海の圖
  俯仰終宇宙  俯仰して宇宙を終せば
  不樂復何如  樂しからずして復た何如

初夏になって草木が伸び、我が家の周りには樹木が繁茂する、鳥たちは喜んで巣作りに励み、わたしも自分の家が気に入っている

野良仕事に精を出し、家に帰ると読書を楽しむ、狭い道には車も入って来れぬから、わずらわしい付き合いをしなくてすむ

近隣の人たちと歓談しては酒を酌み交わし、肴に庭の野草を食う、小雨が東のほうから降ってくると、それに伴って気持ちのよい風も吹く

周王の傳を詳しく読み、それに添えられた絵に目をやる、寝ながらにして宇宙のことがわかるのであるから、こんなに楽しいことはない


閑居して農作業の合間に、山海経を読むさまが歌われている、流觀山海圖とあるから、陶淵明の読んでいた本には絵がつけられていたのである、この本を寝転がりながら読むと、宇宙のことがよくわかると、まずは読書生活の楽しさを歌って、序に変えているつもりなのだろう



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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
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