陶淵明の世界

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 帝王は用才を愼しむ:山海経を読む其十三


讀山海經其十三

  巖巖顯朝市  巖巖として朝市に顯はる
  帝者愼用才  帝は用才を愼しむ
  何以廢共鯀  何を以てか共と鯀を廢し
  重華爲之來  重華 之を爲せるや
  仲父獻誠言  仲父 誠言を獻ずるも
  姜公乃見猜  姜公に乃ち猜はる
  臨沒告飢渇  沒するに臨んで飢渇を告ぐるも
  當復何及哉  當に復た何ぞ及ぶべけん

帝王というものはいかめしく人民に臨むのであるから、臣下を用いるには慎重でなければならない、帝尭が共と鯀を廢して、その代りに重華(舜)を用いたのは何故であったか、よく考えなければならない

仲父(管仲)が人材登用に関して姜公(桓公)に忠言したとき、姜公は管仲を疑い、邪悪な人間を登用した、その結果裏切られ、死に臨んで飢渇を訴えたところで、どうすることができたというのだ


管仲と桓公のことについては、史記斉大公世家に取り上げられている。管仲の死期に臨んで桓公は後任の人事を相談するが、管仲は、易牙以下3人は邪心があるから用いるべきではないと忠言した、しかし桓公はかえって管仲を疑い、この3人を登用した、果たせるかな3年後、3人は謀反を起こし、桓公を餓死に追いやったのである。

この逸話は山海経とは直接関係がないが、あえてそこに挿入したのには、陶淵明なりの必然性があったのだろう、精衞や刑天に見られる激しい情念に対比すると、人間の弱さがいかにつまらぬ災いを招き寄せるか、そんなことを読み取ったのかもしれない



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