陶淵明の世界

HOME本館ブログ東京を描く水彩画万葉集をよむフランス詩選プロフィール掲示板サイトマップ



 陶淵明貧士を詠ず其一「萬族各有託」


詠貧士其一

  萬族各有託  萬族各おの託する有るに
  孤雲獨無依  孤雲獨り依る無し
  曖曖空中滅  曖曖として空中に滅し
  何時見餘暉  何れの時にか餘暉を見はさん
  朝霞開宿霧  朝霞宿霧を開き
  衆鳥相與飛  衆鳥相ひ與に飛ぶ
  遲遲出林鳥  遲遲として林を出でし鳥
  未夕復來歸  未だ夕ならざるに復た來り歸る
  量力守故轍  力を量りて故轍を守る
  豈不寒與飢  豈に寒と飢とあらざらんや
  知音苟不存  知音苟しくも存せずんば
  已矣何所悲  已んぬるかな何の悲しむ所ぞ

どんなものでも頼りとするものがいるのに、孤雲は一人ぼっちでよるべがない、ぼんやりと空中に消え、再び姿を見せることはない

朝霞が夜霧を吹き払い、鳥たちがいっせいに飛び立つ、その中でぐずぐずと一人林を飛び立った鳥は、夕べを前にしてもとの所に帰ってきた

自分の力を考えてもとのままに生きようとするのだろう、だが一人では飢えや寒さを凌ぐのは厳しいだろう、仲間がいないというのは辛いことだ、だがいかんともすることが出来ぬ、悲しんでばかりいられないのだ


一首目のこの詩は、貧士を孤独な鳥にたとえ、さらにその姿に己の姿を重ね合わせたものであろう。



HOME次へ








作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである