陶淵明の世界

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 子有るも金を留めず(陶淵明:雜詩其六)


雜詩其六  子有るも金を留めず

  昔聞長者言  昔 長者の言を聞けば
  掩耳毎不喜  耳を掩うて毎に喜ばず
  奈何五十年  奈何ぞ五十年
  忽已親此事  忽ち已に此の事を親(みづから)せんとは
  求我盛年歡  我が盛年の歡を求ること
  一毫無復意  一毫も復た意無し
  去去轉欲速  去り去りて轉た速くならんと欲す
  此生豈再値  此の生豈に再び値はんや
  傾家持作樂  家を傾けて持って樂しみを作し
  竟此歳月駛  此の歳月の駛するを竟へん
  有子不留金  子有るも金を留めず
  何用身後置  何ぞ用ひん身後の置(はからひ)を



若い頃は長者の小言を聞くと、耳を覆って聞かないようにしたものだ、それが50年過ぎたいま、自分自身がかつての長者と同じことをやっている

若い頃の楽しみを求めることは、今となっては全くない、月日はますます早く過ぎ去り、人生も終わりに近づいた、一度死んでしまってはもう生き返ることもない

全財産を擲って楽しみを極め、時の流れに身を任せよう、子があっても金を残すことはすまい、ましてや自分の死後のことなど考えることはやめよう



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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
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